病理診断科では病理診断を担当しています。病理診断が無ければ、手術など、リスクのある治療ができません。診療を支えるこの重要な裏方の仕事を、これまで非常勤病理医と細胞検査士が担ってきましたが、昨年度から常駐する病理医が赴任し、臨床各科との検討会が日常的にできるようになりました。診断を依頼する臨床医とのコミュニケーションと診断の透明性を重視し、診療の質の更なる向上に貢献したいと考えています。
病理診断科は臨床検査課の中の病理室の一角にあります。病理診断科で働く医師は病理専門医や、それを目指す病理医です。
●病理医は通常、患者さんを診察することはありませんが、患者さんの体から採取した組織(体の一部)の内部を直接顕微鏡で観察します。
●臨床医は、患者さんの病気の本態を知り、それに基づいて治療を行うために、多くの場合、患者さんの組織を取らずに比較的手軽に行えるCT、MRI、超音波検査等の画像診断がまず行われます。しかし、臨床画像では、本態の可能性を一つに絞ることが難しいことが多く、本態を確定するために組織を採取します。組織はホルマリンで固定してから臨床検査課の病理検査室で受け付けられ、組織標本が作製されます。
●病理専門医は、その標本のミクロの世界を顕微鏡で見て、組織や細胞の姿を読み取ることによって、病気の本態が何であるかを判断できる、十分な経験を積んだプロフェッショナルです。その判断を病理組織診断という形で、標本を採取した臨床医に報告します。病理組織診断は、最終的に病変の本態を確定できることから、「最後の診断」といわれます。
●このように、病理医の相手は患者さんの組織とそれを採取した臨床医であることから、病理医は、(診断部門の放射線科医とともに)doctor of doctors(医者の医者)と呼ばれます。
以上のような病理組織診断が中心ですが、それ以外に、細胞診、術中迅速診断、病理解剖も担当しています。それぞれの具体的な内容は、下記の診療内容をご参照ください。
診断のために患者さんの組織を採取するすべての診療科からの検体に対して、以下の4つの病理診断を行っています。これらは一般にあまり知られていませんので、少し詳しく説明します。
すでに概要で説明しましたが、臨床医によって採取された患者さんの組織を直接顕微鏡で観察し、組織や細胞といったミクロのレベルでその姿(形態)を見ることによって、病気の本態(感染なのか腫瘍なのか等)を確認します。組織や細胞の形態だけでは病気の本態の可能性を1つに絞れない場合も時にあり、その場合は免疫染色で、病気の本態と直結した分子が組織に発現しているかどうかを確認することで、多くの場合、診断を確定できます。治療はこの病理組織診断に基づいて行われます。
これは、主にがんの発見を目的として、患者さんから採取した尿や喀痰等に含まれる細胞を顕微鏡で直接見て、がんの可能性のある細胞をスクリーニングする検査です。3名の細胞検査士が絞り込んだ検体に対して、細胞診指導医が診断前精度管理を行った上で診断します。細胞診は検体が比較的手軽に採取できるので、がんの発見や経過観察に使われますが、細胞だけでは情報が十分でないため、診断を確定するためにはしばしば組織診断が必要になります。
手術中に採取した組織を、臨床検査技師が迅速に凍結させて固め、薄く切って顕微鏡で観察できる標本を20分ほどで作成し、病理医がそれを顕微鏡で見て診断し、その結果を手術中の執刀医に電話で伝えます。特に悪性腫瘍が疑われる場合、良悪性の確認、転移の有無や病変の広がりを確認します。
入院中に死亡された患者さんについて、ご遺族の承諾を得て、病気からどのように死に至ったのかを、死後の組織から振り返り、死因や治療の効果等を明らかにするために行います。執刀した病理医は、解剖中に気づいた全身の病変から組織を採取し、その顕微鏡所見に基づく病態の最終診断を、主治医と日本病理学会の剖検輯報に報告します。この報告を受けて、臨床医は検討会(CPC)を開き、経過中にした判断を振り返り、より良い選択は無かったか等を真剣に討論します。
病理診断科では、診断するだけでなく、診断に問題がないかを常にチェックするために、精度管理(診断前と診断後の、別の病理医による診断見直し)と(個人情報が流出しない形での)情報公開(臨床各科との検討症例の院内公開やCPC報告の「甲賀病院紀要」への連載1)という形での院外公開)を行い、診断の透明性が保たれるよう努めています。
1) 杉原洋行, 塚下しづき, 山平めぐみ, 山本昌弘, 辻岡俊幸. 病理からみたCPC:多彩な塞栓症を示した胆管細胞癌の一例. 公立甲賀病院紀要 6巻、61-66, 2003.
杉原 洋行
役職
嘱託病理医
卒業年
1980年
専門分野
胃癌を中心とした消化管癌の病理学
資格(認定医、専門医、指導医など)
病理専門医
(その他)
病理組織診断
診断前精度管理
病理解剖
1998年より非常勤病理医として本院の病理診断を担当してきました。2020年度より本院に常駐する嘱託病理医となりました。
加藤 元一
役職
非常勤病理医
卒業年
1974年
専門分野
消化管の病理学
資格(認定医、専門医、指導医など)
病理専門医、細胞診指導医
(その他)
病理組織診断の診断後精度管理担当
向所 賢一
役職
非常勤病理医(滋賀医科大学教授)
卒業年
1996年
専門分野
消化管癌の病理学
資格(認定医、専門医、指導医など)
病理専門医
細胞診指導医
(その他)
細胞診の診断前精度管理担当
伊藤 靖
役職
非常勤病理医(滋賀医科大学教授)
卒業年
1990年
専門分野
感染症と免疫病理学
資格(認定医、専門医、指導医など)
病理専門医
(その他)
病理組織診断担当
石垣 宏仁
役職
非常勤病理医(滋賀医科大学助教)
卒業年
2000年
専門分野
感染症と免疫病理学
資格(認定医、専門医、指導医など)
病理専門医
(その他)
病理組織診断担当
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