心臓は全身に血液を送り出すポンプの働きをしています。
その心臓の筋肉に酸素と栄養を送っている血管が冠動脈です。冠動脈は心臓の出口からすぐに分かれて、心臓の周囲から包み込むように走っています。この冠動脈が動脈硬化(アテローム硬化)で狭くなったり、攣縮(スパズム)を起こすことで血液の流れが悪くなり、虚血を引き起こし、胸痛や胸部圧迫感などの症状が現れるのが狭心症です。
さらに、アテローム硬化が破けて血管内に露出すると血栓が付着し、血管が詰まると心筋梗塞を起こします。急性心筋梗塞は現在でも20人に1人は致死的になる病気です。
冠動脈は心臓CTまたは心臓カテーテル検査で調べることが出来ます。心臓カテーテル検査は手首または足の付け根からカテーテル(ストローのような細い管)を挿入し、造影剤を使って冠動脈を映し出します。正常であれば図2のように、狭窄があれば図3のように映し出されます。
当院では心臓カテーテル検査・治療は可能な限り僥骨動脈(手首)からのアプローチで行っています。患者さんの苦痛も少なく検査後はすぐに歩行が可能です。診断カテーテル検査で狭窄病変があれば引き続き同時に治療を行うようにしています。
ただし、慢性完全閉塞などの複雑な病変は、診断カテーテル検査と別日に治療の予定を組んでいます。治療はステントとバルーンが中心になります(図4)。ほぼ全例で血管内超音波検査(IVUS)を行い、血管の状態を多方面から評価し治療しています(図5)。
ステントの治療の場合に従来型ステントでは再狭窄率が20%以上と高率でしたが、再狭窄を予防する薬剤が含まれている薬剤溶出性ステントを使用し、再狭窄率は数%程度に減少しています。
2021年から当院はローターブレーターの認定施設に指定されました。バーと呼ばれるドリルの先端にミクロダイアモンドが埋め込まれています。このバーを1分間に14~19万回転で高速回転させることによって、冠動脈内の硬い動脈硬化病変を削ります。このバーの特長は、硬い部分のみを削り、柔らかい部分を削りません。一般的に動脈の血管内壁の健常な組織は柔らかいであるため、損傷を与えることはないと言われています。これまで石灰化で非常に硬くバルーン治療では治療が困難であった病変に対しても、ローターブレーターで治療が可能となりました。
心臓カテーテルシネ装置は新しいフィリップスバイプレーンが導入されています。これまでは1方向からの透視でしたが、2方向から同時に透視することで、より複雑な病変の治療が可能になりました。
また、同時に撮影することで造影剤の減量ができ、従来の1/2から2/3の使用量で検査可能です。これにより腎機能の低下した患者さんにも適応が広がりました。さらに被爆も新装置では低減され、従来の1/2から2/3程度の放射線量で検査と治療が出来ます。
虚血性心疾患の検査は、心臓カテーテル検査が中心となりますが、心臓CTの導入により、外来でも十分評価することが可能となりました。2019年には320列の最新のキヤノンメディカルシステムズ社製Aquilion ONEが導入されました。320列CTは、1心拍で心臓を撮影できるため、撮影時間は数秒と非常に短時間で撮影できます。これまで不整脈などで撮影が困難であった患者さんの冠動脈も従来と比較してより鮮明に撮影することが可能となりました。当院でも年間250例の心臓CTを施行しております。
DEPARTMENT
診療科・部門のご案内
診療科
専門外来
部門
よくご覧いただくページ